演劇 ま


劇団満遊戯賊プロデュース公演「我武者羅」 8月14日 HEPホール

 この劇の一つのキーは、源義経と呼ばれる男がもう一人、海賊(水軍)の長として存在していたということ。源義朝が平治の乱に敗れた後、鞍馬寺に幽閉されていたその息子、少年・義経(幼名を遮那王)を海賊同士の争いから彼と知らずに捕縛してしまう。源氏の残党狩りが厳しかった当時、それは非常に危険な所業だったが、案の定争いに巻き込まれていく。

 ここで中心となって語られているのは、男たちの運命の物語だ。その道を選ぶことが自分にとって致命的であることを知りながら、復讐のためにあえてその道に進む者。それが自分の使命だからと、勝ち目のない戦いに身を投じる者。自分を守り家を守り、友を守るために究極の選択を迫られる者。母の命を救うために未来をあきらめ、あえて火中に飛び込もうとする者。あくまで命令だからとそれに従って誰とも知らぬ者を守ろうとして命を落とす者。……理不尽な運命を自ら納得して選び取って、多くの者が破滅していく、それを美学であるとして、美しくカッコよく劇は激しいスピードで展開する。

 そのスピードを支えているのは、一つには殺陣の鋭さだ。冒頭に幼年の海賊・義経らを追う清盛方のカムロと宗清(大久保勝巳、大人らしい抑えた演技がよかった)との激しい応酬に始まり、鬼若(徳永健治)、海賊・義経(内海直人)、康教(愛飢男)をはじめとする鋭い立ち回りは、まさに目も止まらぬほどで、劇の緊張感を激しく高めた。

 さらに、男たちの運命の変転が次々と激しく展開されるのも、目くるめく思いをした一つの要因だ。誰が主役と定め難いほどに、海賊・義経を中心に、その部下である佐平(未来来シゲル)、唯介(山元隆弘、好演)、自ら激しい運命に巻き込まれながら、周囲をその渦に巻き込んでいく遮那王(へんみ)、康教、宗清らほとんどすべての者に激しいドラマが用意され、一つ一つが丁寧に描かれ演じられており、劇の時間が弛むことがなかった。目立たない形で男たちのドラマから仄かに見え隠れする女たちのドラマ……鬼若への思いを秘めながら倒れる秋(大木成子)、遮那王に従うおしの少女真薙(後藤佳恵。無言ながら一人でも舞台を持たせる演技力は特筆)、夫・佐平を理不尽に失う加ノ子(阿部遼子)らの劇……も十全に描けていた。個々の役者の前のめりで激しい演技力もさることながら、脚本の遠藤麻子の筆力、演出の諏訪誠の構成力に舌を巻いた。(20008月)


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