ら・わ

Rosaゆき

メイ・リ

台湾のメイ・リ「The last 15 minutes」は、そう言われなければ人生の最後の15分というよりも、駅のホームで恋人と別れるシーンのようだったが、そのような何気なさが、実はこの作品の強さだったのではないか。

正確には、何も彼女はこの作品を「人生の最後の15分間」を描いたものだとは言っていない。当日のプログラムには「もしもあなたの人生が、あと15分しかないとしたら、あなたは何について考えますか?」と記しているのだ。最後に回想されたシーンとして、やや時間が交錯気味に展開する。日常的な感情の流れに、「人生の最後」であるという、本当の別れが意識されているのが、動きの緊張度を高めたのだろう。

彼女の動きもまた、すごさと何気なさが交互にあらわれる。彼女の何ものかに跳ね返るような動き=何かにふれるとバウンドするような動きは、彼女の外界との接し方を象徴するようで、強い説得力がある。動きの流れとしては吃音に似ていて、身体のわりに長い腕がスタッカートのようにクックッとためらうのが、ひじょうに印象的だ。視線が強いのもいい。

アジア・コンテンポラリー・ダンス・フェスティバル Aグループ 2001.10


エドウィン・ロン

 藤條蟲丸がプロデュースした「亜細亜新潮流」(1999824日、TORII HALL)で出会えた、香港からやってきたエドウィン・ロンの身体による即興は、定かにつかめないながらも確かにそこに大きく悲しい物語があることを感じさせた。仕掛けとして用意されたのは、紙を折ること。色紙で盥船のようなものを折り、飛ばし、折りながら飛ばしながらそれに連なる動きでステップを作って舞う姿は美しく、腕の回しやひねり、身体の支点の作り方が印象的だった。時折、紙を折るしぐさをも交えながら、ほぼ一定の足の刻みが、確実さと優雅さを醸し出しているようで、魅了された。「折る」という動きを核にしたことから、折る、折るふり、折れない……というように、動詞への愛と焦燥のバリエーションができていたことが面白い。後半は、ホールの柱に色紙を貼り、ぶつかり、ラジオの音を聞かせ、と夢中にコミュニケートしようとしていたのも、面白みを通り越して、一種の悲哀となって感動させてくれた。(PAN PRESS


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